井上雄彦先生の構成力〜感謝のフリースロー⑨〜

スラムダンクという漫画は読めば読むほど発見がある漫画だ。無駄な情報をカットしている構成力はまさにそのものではないでしょうか。伝説とも呼ばれる山王戦の台詞のない描写に代表されるように物語をシンプルな点まで削ぎ落として、構成している。

読んでいてふと気がついたことが、家族の描写が全くないことだ。赤木や流川など、家族の描写が他の漫画と比べても驚くほどない。作中で登場するのは桜木花道のお父さんと山王工業のエース沢北栄治の父親、バスケ狂・テツ沢北(44)くらいしか、記憶にない。それくらい、バスケを中心に描き切った漫画だといえる。(登場人物は高校生にしてはなかなかの老け具合なので赤木や魚住の父親がいれば見てみたいが)

余計な情報がないからこそ、バスケを通して登場人物の行動に理解を集中することができる。これは重要な点だ。仕事でも同じことが言えるのではないだろうか。飲みやプライベートの付き合いで相手を理解することも良いと思うが、仕事を通して相手を理解すれば良いと思う。人間関係の構築→仕事ではなく、仕事→人間関係の構築という順序の方がシンプルではないだろうか。

スラムダンクは登場人物の魅力を描き切ることに重点をおいた作品だからこそ、一人一人のセリフに重みがあり、今も愛され続けているのではないだろうか。本当に集中するべきことに集中する。これが大切だ。